デザインシステムとは?導入が必要なケースとFigma構築の進め方を紹介

デザインシステムとは?導入が必要なケースとFigma構築の進め方を紹介

デザインシステムの定義や構成要素から、導入するメリット、Figmaでの構築手順、参考事例、気をつけるべきポイントまで、プロダクト責任者の目線に立って解説します。スタイルガイドやUIキットとの違い、導入判断の3つの軸もまとめています。

目次

プロダクト開発を進めるなかで、チームから「デザインシステムを整備したほうがいいんじゃない?」という議題が上がったけれど、何から手を付ければよいか整理しきれていない方も多いのではないでしょうか。次のような悩みを抱える方も少なくありません。

  • Figmaのコンポーネント整理レベルで十分なのか、本格的に組むべきかの判断軸がない
  • 複数チーム・複数プロダクトを抱えており、UIのブレと合意形成コストが膨らんできた
  • AIで実装が先行する時代でも、デザインシステムを作る価値があるのか迷う

この記事では、デザインシステムの定義や構成要素から、導入するメリット、Figmaでの構築手順、参考事例、気をつけるべきポイントまで、プロダクト責任者の目線に立って解説します。

結論を先にお伝えすると、デザインシステムとは、デジタルプロダクトの一貫した体験を効率的に届けるための、デザイン原則・スタイル・コンポーネント・運用ルールをひとまとめにした体系です。 単なるFigmaの部品集ではなく、なぜそう作るかの思想と、誰がどう更新するかの運用まで含めて初めてデザインシステムと呼べます。

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デザインシステムとは?基礎を1分で整理

1. 「デザインシステム」を一言で解説すると

デザインシステムとは、デジタルプロダクトの一貫した体験を効率的に届けるための、デザイン原則・スタイル・コンポーネント・運用ルールをひとまとめにした体系を指します。原則(なぜそう作るか)運用(誰がどう更新するか)を含む点が、単なる部品集との大きな違いです。

複数プロダクト・複数チームにまたがる組織が増えるなかで、デザインシステムは「UI判断がブレない状態を支える社内インフラ」として位置づけられるようになってきました。判断軸が共有されていれば、新規画面が増えても、別事業に展開しても、ユーザー体験のブレを抑えやすくなります。

Figmaのコンポーネントを揃えれば完成、と捉えるのは早計です。 原則と運用が抜けた状態では、新しいパーツを足すたびに判断軸が人によってブレていき、数ヶ月で形骸化してしまうケースもあります。

2. スタイルガイドやUIキットとはどう違う?

スタイルガイドやUIキットは、デザインシステムの一部を構成する要素です。スタイルガイドは色・フォント・余白といった視覚ルールの取り決めで、UIキットはそのルールに従って組まれた再利用可能な部品集を指します。

スタイルガイドとUIキットを内包したうえで、デザイン原則・運用フロー・ドキュメントまでを束ねたものが、デザインシステムです。 「Figmaのライブラリさえあれば足りる」という認識はUIキットとしては十分ですが、そこから複数プロダクト・複数チームに広げていくと判断のブレが出やすくなります。

具体的には、スタイルガイドとUIキットだけで「デザインシステム」と呼んで運用すると、原則がないために、新しいパーツの追加可否を裁定できる人が誰もいない状態に陥ります。また、実際のプロダクト開発のフローのどこで組み込むかが決まっていなければ、参照される回数も減っていきます。

AI時代に、デザインとコードの距離はどう変わった?

デザインとコードの距離は、AI普及以降ますます縮まっています。かつてはデザインをFigmaで作り、それをエンジニアがコードにするという前提でした。昨今では、生成AIによるコード生成やコンポーネント駆動開発の普及で、実装側からデザインへ逆輸入されるケースも増えました。また、そもそもデザインデータを持たずに実装を正とする運用もあり得ます。

デザイントークンやコンポーネントは、Figmaで完結するものではなく、デザインとコードの双方で共有する資産になりつつあります。実装側に同名のコンポーネントを用意し、Figma側のVariantsと対応する状態を作る運用もあたりまえになってきました。デザインシステムは、デザインとコードの両者を橋渡しする「共通言語」であることが求められています。

デザインシステムの構成要素は?3つのレイヤーで整理

デザインシステムを構成する要素は、「思想レイヤー」「表現レイヤー」「運用レイヤー」の3つに整理できます。抽象から具体・運用へと降りていく順序で見ていくと、自社にどこまでの粒度が必要かを判断しやすくなります。

1. 思想レイヤー:デザイン原則とブランドトーン

思想レイヤーは、プロダクトとして何を大事にするかを言語化した「デザイン原則」と、ユーザーへの語り口を揃える「ブランドトーン」で構成されます。判断に迷ったときに立ち戻る拠り所として機能する層です。

たとえば「迷わせない」「楽しさを提供する」のような原則を3〜5個に絞って明文化し、コンポーネントを増やすかどうかや、表現を変えるかどうかを判断するときの基準にします。原則は多すぎても混乱の元なので、絞り込みが鍵になります。

原則を言語化しないまま部品だけ作ると、判断軸を持つ人がいなくなり、デザインシステムは形骸化していきます。 部品の見た目だけが揃っても、「なぜそう作るか」が共有されていないと、増築のたびに整合性が崩れていきます。

2. 表現レイヤー:スタイル・コンポーネント・トークン

表現レイヤーは、カラー・タイポグラフィ・アイコン・余白などの「スタイル」、ボタンやフォームといった「コンポーネント」、それらを変数化した「デザイントークン」で構成されます。デザインシステムのなかで、もっとも目に見える層です。

Rabee UIのButtonコンポーネント。プロパティやVariantsが一覧化されている

デザイントークンとは、色や余白を直接ハードコードせず「primary-600」「spacing-md」のような名前で扱う仕組みです。カラーやタイポグラフィ、スペーシングを直接書かず、デザイントークンとして変数化することで、似たような色が無限に増殖してしまう事象を防ぎ、ダークモードやリブランディング時のリニューアルのコストも下げられます

FigmaのVariablesやライブラリ機能を使えば、トークンとコンポーネントをデザイン側で一元管理し、エンジニアと共通の語彙でやりとりできます。注意点としては、コンポーネントを一気に増やしすぎても使わないパーツが増えたり煩雑になったりして実運用で困りごとが生じてきます。最初は、必須の20〜30個程度に厳選してから広げていくのがおすすめです。

3. 運用レイヤー:命名規則とドキュメント

運用レイヤーは、コンポーネントの命名規則・ドキュメント・更新フロー・Figmaライブラリの公開と廃止ルールで構成されます。「誰がオーナーで、誰が承認すれば新しい部品を追加できるか」を最初に決めないと、デザインシステムは分裂します

各チームが自分用の派生コンポーネントを量産し始めると、システム本体と現場の運用が乖離していきます。気が付けば誰も触らなくなり、最初の構築コストを回収できないまま立ち消えてしまうケースも珍しくありません。

ドキュメントはFigmaのページ内、NotionやStorybookなどのツールに切り出し、デザイナーだけでなくエンジニアやPdM(プロダクトマネージャー)が同じ場所で参照できる状態を保ちましょう。実運用のフローを見据えてつくらなければ、作っただけで使われないUIコンポーネント一覧に陥ってしまいます。

デザインシステムを導入する4つのメリットは?

デザインシステムを導入するメリットは、ユーザー体験の一貫性制作開発スピード合意形成コストオンボーディング期間の4軸で整理できます。

1. ユーザー体験を一貫させられる

ユーザー体験を一貫させられるのが、デザインシステムを導入する最も大きな効用です。同じボタンや入力フォームが画面ごとに微妙に違うという状態を防ぎ、プロダクト全体で「同じ操作には同じ見た目と挙動」を担保できます。

同じ操作には同じ見た目と挙動を、全プロダクトで担保できるのがデザインシステム最大の効用です。 一貫性が担保されると、ユーザーは新しい画面でも操作を学び直す必要がなく、学習コストとサポート問い合わせの両方を下げやすくなります。

たとえば、複数プロダクトを横断するアカウント・ヘルプ・設定画面を想像すると、効果がわかりやすいかもしれません。ユーザーにとっても「見慣れていて、わかりやすい」UIを提供し続けられるので、サービス全体のブランド体験を底上げできます。

2. 制作と開発のスピードを上げられる

制作と開発のスピードを上げられるのも、デザインシステム導入の大きな利点です。ボタンや入力フォームを毎回ゼロから設計せず、ライブラリから配置するだけで新規画面を組めるようになります

Rabee UIのAdmin Layoutサンプル。共通コンポーネントを組み合わせて画面を構成している

エンジニア側でも同じコンポーネントを実装してストックしておけば、デザインからコードへの落とし込みの手戻りが減ります。デザインとコードに同じ語彙を持たせることで、認識のズレに由来する修正のラリーも抑えやすくなります。

ただし、部品の流用だけを目的化すると、プロダクト固有の体験まで均質化してしまうことはデメリットにもなり得ます。差別化したい領域は意図的にカスタム枠として残しましょう。

3. 合意形成のコストを下げられる

合意形成のコストを下げられるのも、デザインシステムを入れる意義の一つです。「このボタンの色をどうするか」「このパターンはUX的にありか」といった議論を、デザイン原則とトークンに照らして判断できるようになるため、感覚での押し問答が減っていきます。

デザイナー・エンジニア・PMが同じ語彙でやりとりできるようになり、レビュー時の認識ズレが小さくなります。 コンポーネント名やトークン名が共通言語として機能することで、修正依頼のすれ違いも起きにくくなります。

結果として、レビュー会にかかる時間や修正のラリーの回数が減り、リリースまでのリードタイム短縮にも繋がります。ただし、原則を抽象的すぎる表現にすると「結局、これは原則に沿ってるの?」の議論も再発しやすいです。原則を定めるときは具体的な行動指針までセットで定義しましょう。

4. 新規メンバーのオンボーディングを短くできる

新規メンバーのオンボーディングを短くできるのも、デザインシステムが提供するメリットです。ドキュメントとライブラリを読めば「このプロダクトの作法」を最短で把握できる状態を作れます

先輩に都度聞かないと判断できない状態から、ドキュメントを見れば8割は自走できる状態に近づき、立ち上がりに必要な期間を短縮できます。業務委託や短期で参加するメンバーが入る場面でも、チーム全体のオンボーディングのコストを下げられます。人員のスケールアップ、スケールダウンのどちらが起きても対応しやすくなります。

ただし、ドキュメントが古いまま放置されていると、かえって新規メンバー側のキャッチアップが大変になってしまいます。更新のフローや責任者を明確にして、定期的なメンテナンスを運用フローに組み込みましょう。

デザインシステムが必要な組織とは?導入判断の3つの軸

デザインシステムは「あれば必ず便利である」というものではなく、組織の規模やフェーズによって必要ではないケースもあります。プロダクトと画面の規模ステークホルダー数と合意形成コストプロダクトのフェーズの3つの軸で見ていくと、自社にいま必要かどうかを判断しやすくなります。

1. 軸1:プロダクトと画面の規模

観点 まだ不要 デザインシステムを導入すべき
プロダクト数 単一プロダクト 同一ブランドで複数プロダクトを展開
画面数 20画面以下 数十画面を超える
必要な粒度 スタイルガイド+UIキットで十分 原則+トークン+運用まで必要

プロダクトと画面の規模は、わかりやすい1つの目安です。単一プロダクト・画面数が20を下回るようなPoC(概念実証)やMVP段階では、本格的なデザインシステム構築は過剰な投資になりがちです。

画面数が数十を超えるあたりから、毎回ゼロから組む工数のほうが上回り、デザインシステムをつくることのメリットが生じてきます。 また、同一ブランドで複数のプロダクトを展開するようになるとリターンはさらに大きくなり、構築にかかったコストも回収しやすくなります。

ポイントとしては、「スタイルガイド+UIキット」止まりで十分なフェーズと、「原則+トークン+運用」まで含むデザインシステムが必要なフェーズは別物であることです。規模が小さくても今後スケールする確度が高いプロダクトは、トークンと最小コンポーネントだけ先に整えておくと、後のフェーズでの移行コストを抑えやすくなります。

2. 軸2:ステークホルダー数と合意形成コスト

観点 まだ不要 デザインシステムを導入すべき
チーム体制 デザイナー1〜2人で全体を見られる 複数チーム・複数事業部が並走
UI認識のズレ 口頭ですり合わせが回る 「画面が違う」の指摘が頻発
合意形成コスト 都度の打ち合わせで収まる 事業部間の調整が累積している

ステークホルダー数と合意形成コストは、プロダクトの規模と並ぶ重要な判断軸です。複数チームのUI認識のズレが顕在化してきたタイミングが、デザインシステム導入の効果が最も大きく出るシーンです

たとえば、新規事業として立ち上げたBtoB SaaSが既存事業のプロダクト群とUIで衝突し、サポート問い合わせや営業説明のたびに「画面が違う」と指摘されるような状態は、典型的な導入タイミングといえます。事業部間で「うちはこう作っている」が並列していると、合意形成のたびにコストが累積していきます。

逆に、デザイナー1〜2人が同じ部屋で全プロダクトを見ているフェーズでは、Figmaのローカルなコンポーネント運用で十分なケースが多くなります。なお、「合意形成コストが高いから入れる」だけで進めると、肝心の合意形成プロセスを後回しにしてシステムだけ作って終わるケースが出てきます。合意形成の運用設計とセットで導入しましょう。

3. 軸3:プロダクトのフェーズ(PoCかグロースか)

観点 まだ不要 デザインシステムを導入すべき
フェーズ PoC・MVP(仮説検証が最優先) グロース・スケール(機能追加と画面追加が並走)
優先すべきこと 検証スピード 開発速度の維持・UIの一貫性
推奨アクション トークンと最小コンポーネントだけ先に整備 本格的なデザインシステム構築に着手

プロダクトのフェーズは、デザインシステムにかける投資の粒度を決める軸です。PoCやMVP段階は「正しい問題を解いているか」の検証が最優先で、UIの一貫性より仮説検証のスピードを優先したほうが合理的な場面が多くなります。

グロース・スケール段階に入り、機能追加と画面追加が並走し始めたら、デザインシステムの整備で開発速度を維持するフェーズに移ります。PoC段階で本格構築に走ると検証スピードが落ちてしまいます。反対に、グロースしはじめた段階で後回しすると、UIの負債が気づかないうちにどんどん膨らんでいきます

AIで実装が先行する時代でも、複数チームの合意形成と大規模開発を伴う場面では、Figma上のデザインシステムが依然として求められることが多いです。 AIによるコード生成のアウトプットが増えるほど、それらの品質を揃えるための「判断軸」としての原則とトークンの価値はむしろ上がっていきます。

どのフェーズで、どこまでの粒度のデザインシステムを作るかは、外部の第三者を交えて壁打ちすると判断軸を整理しやすくなります。自社のフェーズと規模でいま着手すべきか迷っているなら、初期構想の壁打ちからRabeeにご相談ください。

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デザインシステムの作り方は?Figmaで構築する場合の5ステップ

今回は、Figmaを使う場合のデザインシステムの構築方法をかんたんに紹介します。なお、デザインシステム構築に必ずしもFigmaが必要というわけではありません。昨今では「DESIGN.md」のように、AIが理解しやすい形のドキュメントにデザインの制約をまとめるケースもあります。

さて、Figmaでデザインシステムを構築する場合は、原則の言語化UIの棚卸しトークン定義コンポーネント化運用フロー策定の5ステップに分けて進めると整理しやすくなります。それぞれのステップで想定されるアウトプットと巻き込むべき役割を意識しておくと、社内での合意形成もスムーズに進みやすくなります。

1. デザイン原則を言語化する

デザインシステム構築のステップ1(原則の言語化)は、プロダクトとして何を大事にするかを3〜5個の原則に落とし込み、判断に迷ったときの拠り所を作る工程です。必要であればステークホルダーとも一緒に「このプロダクトの良さは何か」「絶対に外したくない体験は何か」をすり合わせ、各人が抱いている共通の軸を抽出していきます。

想定されるアウトプットはデザイン原則のドキュメント、巻き込むべき役割はPM・エンジニアリングマネージャー・経営層です。原則を「ユーザーに価値を届ける」のような汎用語で済ますと、後の判断軸として機能しません。具体的な行動指針にまでブレークダウンできるようにしましょう。

2. 既存UIを棚卸しする

デザインシステム構築のステップ2(UIの棚卸し)は、現状プロダクトに登場しているUI要素を一覧化し、重複と揺れを可視化する工程です。 スクリーンショットを集め、ボタン・カード・モーダル・入力フォームなどを洗い出します。棚卸しの段階で「統合すべきだが重複しているところ」と「プロダクト固有の魅力として残すべきところ」を分類しておきましょう

この工程を挟むことで、プロダクトごとに同じ役割のボタンが5〜6種類も乱立しているといった「重複と揺れ」が可視化されます。対応すべき箇所を最初に切り分けておくと、次のトークン定義・コンポーネント化フェーズが速く進みます。

想定されるアウトプットはUIの一覧表(Figmaまたはスプレッドシート)、巻き込むべき役割は主にデザイナー・エンジニアです。汎用的なUIと、サービス固有のUIのどこまで作り切るかをざっくり決めていきましょう。

3. トークンとスタイルを定義する

デザインシステム構築のステップ3(トークン定義)は、カラー・タイポグラフィ・スペーシング・角丸のサイズなどをデザイントークンとして変数化する工程です

FigmaのVariables画面。カラートークンがLight・Darkモードごとに定義されている

Rabee UIのTypographyページ。フォントサイズがトークン名とセットで定義されている

FigmaのVariables機能を使うと、トークンを参照したコンポーネントを後から一括で差し替えできるため、ダークモード対応・リブランディングなどに強くなります。トークンの命名はsemantic(primary / danger)primitive(blue-500 / red-600)の2階層で持つと、用途と値の両方を明確にできます。

想定されるアウトプットはFigmaのVariables一式と命名規則ドキュメント、巻き込むべき役割はデザイナー・フロントエンドエンジニアです。構築方法が分からないときは、他社のデザインシステムを参考にするのがおすすめです。

4. コンポーネント化してFigmaライブラリにする

デザインシステム構築のステップ4(コンポーネント化)は、棚卸しで決めた基本コンポーネントをFigmaでVariants化し、社内ライブラリとして公開する工程です。 ボタン・入力フォーム・カードなど数十種を対象にします。バリアントは「サイズ × 状態 × 種別」のように軸を2〜3個に抑え、組み合わせ爆発を防ぎましょう

FigmaでのButtonコンポーネントのVariants一覧。サイズ・状態・種別の軸で整理されている

「default / hover / disabled」のような状態軸、「primary / secondary」のような種別軸、「sm / md / lg」のようなサイズ軸を組み合わせて1コンポーネントを構成します。「あらゆる用途に対応できる万能ボタン」を作ろうとすると、Variantsが増えすぎてしまってデザインシステムを構築する意味が薄くなります。

そして、各コンポーネントには使う場面使わない場面実装側のコンポーネント名をドキュメントとして併記し、デザインと実装の対応を保ちます。想定されるアウトプットはFigmaライブラリ(社内公開済み)とコンポーネント仕様ドキュメント、巻き込むべき役割はデザイナー・フロントエンドエンジニアです。

5. ドキュメント化と運用フローを整える

デザインシステム構築のステップ5(ドキュメント化と運用フロー)は、コンポーネントの使い方・更新ルール・オーナー・廃止プロセスを整備し、チームメンバーが検索可能な状態にする工程です。「新しいコンポーネントの追加申請 → デザインオーナーがレビュー → ライブラリに昇格」のような申請フローを、運用が始まる前に決めておきましょう。

運用フローは導入時に決めましょう。作ってから後付けで決めると実際の運用フローで忘れられやすくなり、形骸化につながっていきます。 また、ドキュメントをFigma内のみで作成するとエンジニアやPMが探しにくくなるため、社内の共有ドキュメント基盤に置くほうが継続して参照されやすいでしょう。

想定されるアウトプットは運用フローを言語化したもの、巻き込むべき役割はデザインオーナー・エンジニアリングマネージャー・PM・その他ステークホルダーです。運用フローの設計で「自社の体制でどこまで自走できるか」の判断は、外部の伴走者を交えると詰まりにくくなります。

参考になるデザインシステム事例3選

すべての事例を見る必要はありません。自社の規模や自社フェーズに近いものをいくつか選んで読みましょう。以下の3つは、BtoB SaaS・国際標準・toC大規模という異なる立ち位置で運用されている代表例です。

1. SmartHR Design System

SmartHR Design Systemは、SmartHRが複数プロダクト横断で運用しているデザインシステムです。SaaSの複数プロダクト・複数チームを支える運用知見が公開されており、表現レイヤーと運用レイヤーの両方が学べます。

BtoB SaaSで複数プロダクトを抱えている組織にとって、規模感とユースケースが最も近い事例です。 カラー・タイポグラフィ・コンポーネントだけでなく、執筆ガイドラインやプロダクトデザイン原則まで整備されており、運用の解像度が高い点が参考になります。

なお、すべてのデザインシステムに言えることではありますが、これはあくまで一企業の運用事例です。自社の体制や人員規模を踏まえて「同じ粒度を最初から目指さない」判断も必要になります。

参考:SmartHR Design System https://smarthr.design/

2. Material Design(Google)

Material Designは、Googleが公開している国際標準クラスのデザインシステムです。原則・トークン階層・コンポーネント・モーション・アクセシビリティまで網羅的に体系化されています。

デザイントークンの2階層構造(semantic / primitive)の考え方は、自社のトークン設計の教科書として使えます。 世界規模で運用されるシステムがどう「拡張可能性」と「一貫性」を両立しているか、その構造を読み解ける点が学びどころです。

参考:Material Design 3 https://m3.material.io/

3. Spindle(Ameba)

Spindleは、株式会社サイバーエージェントのAmebaブランドが運用しているデザインシステムです。カラーモード対応とアクセシビリティへの踏み込みが深く、toC大規模サービスならではの整備が学べます

カラートークンをどうダークモードやアクセシビリティ担保に対応させているか、実装レベルでの工夫が公開されている点が参考になります。多様なユーザー環境への対応をシステムとして整備している例です。

参考:Spindle by Ameba https://spindle.ameba.design/

デザインシステム構築で陥りやすい失敗ポイント

デザインシステム構築は、作って終わりではなく運用が始まってからのほうが長丁場になります。よくある躓きを3つに整理しておくと、初期段階で先回りして手を打ちやすくなります。

1. 完璧主義で動き出せなくなってしまう

完璧主義は、デザインシステム構築の初期で最も陥りやすい落とし穴です。「全コンポーネントを揃えてから公開しよう」「全画面を棚卸ししてから着手しよう」と考えると、スピーディーには動き出せなくなってしまいます。

まず使用頻度が高い10〜20個のコンポーネントだけで最小スコープのライブラリを公開し、運用しながら追加しましょう。 完璧版を待たず、不完全でも今週公開して、来週から運用しながら直すといったスタンスで進めるほうが、現場での採用が早く立ち上がります。

最初のリリースは「叩き台」と社内で位置づけ、運用のなかで磨き上げていく流れを最初に共有しておくと、完成度に対する過剰な期待値を下げられます。

2. 運用ルールを決めずに作って形骸化してしまう

運用ルールを整備せずに走り出すことは、デザインシステムが形骸化していく最大の要因です。オーナーが不在だったり、追加の申請フローが未整備のまま公開すると、各チームが勝手にローカルで派生コンポーネントを作り、あっという間に使われないものになってしまいます。

たとえば複数事業部や複数チームを抱える組織で「誰がメインオーナーか」「新しいコンポーネントの承認者は誰か」が決まっていないと、元々のライブラリと現場で作られた派生コンポーネントがどんどん乖離していきます。公開と同時に「オーナー」「追加申請フロー」「廃止プロセス」をドキュメント化し、最初の1ヶ月で運用テストしましょう

決めたフローは実際に1回使ってみて、フローの詰まりどころを早期に修正しておくと、運用がスタートした後の手戻りを抑えやすくなります。運用フローの整備や運用テストの伴走に外部の手を借りるかは、自社の人員とプロダクトのリリース予定等から逆算して判断しましょう。

3. ステークホルダー合意を後回しにしてしまう

ステークホルダー合意の後回しは、構築完了後に最も大きな手戻りを生む要因です。デザイナーチームだけでコンポーネントを揃えて公開すると、PMや経営層から「うちのプロダクトの体験はそうじゃない」と後から合意がひっくり返ってしまいます

最初の段階でPM・エンジニアリングマネージャー・経営層を巻き込み、原則と主要コンポーネントの方向性に合意を取りましょう。 完成形を見せて承認を求めるよりも、原則のドラフトと主要パーツの方向性の段階で巻き込むほうが、後の手戻りを大幅に減らせます。巻き込みコストを「コスト」ではなく「あとで作り直さないための投資」と捉えると、初期に時間をかける意義が腹落ちしやすくなります。

デザインシステムとは?Q&Aサマリー

1. デザインシステムとスタイルガイドの違いは?

スタイルガイドは視覚ルールの取り決め、デザインシステムは原則・コンポーネント・運用まで束ねた上位の体系です。 スタイルガイドだけでもUIのブレは減らせますが、複数プロダクト・複数チームに広がる場面では、デザインシステム化したほうが判断のブレを抑えやすくなります。

2. 小規模プロダクトでも作るべき?

PoCやMVP段階では本格構築は過剰投資になりやすいです。ただし、トークンと最小コンポーネントだけ先に整えると後が楽になります。 後でスケールする確度が高い場合は、最小スコープの土台だけ用意しておくと、本格構築への移行コストを下げられます。

3. 構築にかかる期間の目安は?

最小スコープなら数週間〜2ヶ月、本格構築なら数ヶ月〜1年程度が目安です。 規模・体制・どのレイヤーまで作るかで変動するため、まず「どのレイヤーまで作るか」のスコープ定義から始めましょう。

4. AI時代でもデザインシステムは必要?

AIを使いこなすほど、品質を揃える「判断軸」としてのデザインシステムの重要性はむしろ上がっています。 ただし、最終アウトプットは必ずしもFigmaとは限らないことに留意しましょう。AI時代においても、たとえば「DESIGN.md」のようなUIデザインの品質を保つための機能は効果を持ち続けます。なお、複数チームの合意形成や大規模開発を伴う場面では、Figma上の共通言語としてのデザインシステムが依然として求められやすいです。

5. Figma以外のツールでも作れる?

複数チームを横断する、かつデザインデータを正として開発を進める運用なら、Figmaを中心に組むのが現時点では最も進めやすい選択肢です。 デザインツールとしてはAdobe XDなどのツールもありますが、チームに共有できるライブラリ機能・変数を管理できるVariables機能など、実装との橋渡しとしてはFigmaが優秀です。


Rabeeは、デザインシステム構築や大規模システム開発に強みがあるWeb開発会社です。デザインシステム構築の方針整理からFigmaでのライブラリ化、運用フロー設計まで、最初の構想の壁打ちからぜひRabeeにご相談ください。

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